君が好きだから僕は書く

恒松エントのブログとエッセイ

第1回ジャニヲタおじさん的Overture音楽祭

皆さん、Overture聴いてますか?もしかして、いつもスキップしてませんか?

CDに収録されてても今ひとつ必要性が理解されにくい、1曲目のインスト(歌が入ってない)曲、Overture(オーバーチュア)。元々はフランス語で「開始(ouverture)」という意味の言葉だそうで、オペラや組曲の最初に演奏される曲、つまり英語では「序曲」という意味です。

Overtureはメインの曲ではありません。また、本人たちの歌や声が入っていないことがほとんどです。そんなOvertureをついスキップしてしまう気持ちも、わかります。それでもこのOvertureにはきちんと聴く価値がある、僕は声を大にして訴えます。それはOvertureが、アルバムやコンサートにおいて重要な役割を果たしているからです。

本人たちの歌声が入っていない曲をわざわざ冒頭に挟む意味は、アルバムやコンサートの世界観に我々を正しく導くためです。序曲であるOvertureの終着点は、アルバムやコンサートの主題、つまりテーマやコンセプトになります。聴き手である我々を正しく導くために、Overtureは、そのアルバムやコンサートで訴えたい世界観全体をきちんと集約する必要があります。つまりOvertureは、アルバムやコンサートの表現意図をその短い曲の中にコンパクトに収めたものであると言えます。Overtureを深く理解することで、彼らが表現しようとしている世界観全体の理解を深めることができるのです。

要するにOvertureを知れば、そのアルバムやコンサートはもっと楽しめるのです。というわけで今回は、みなさんにOvertureのことをもっと知ってもらうため、普段あまりスポットが当たらないOvertureをいくつか紹介したいと思います。

題して「第1回ジャニヲタおじさん的Overture音楽祭」スタートです!

OVERTURE〜ルート・17/「男闘呼組」(男闘呼組

男闘呼組

男闘呼組

いきなり四半世紀以上前の曲で恐縮です。当時カセットテープでループ再生のたびに、流れてくるOverture聴いたなぁ。おそらく僕がOvertureとして認識した最初の曲が、これです。シンセサイザーの印象的なハーモニーで演出される期待感。そこからハードなディストーションでリズムを刻む「ルート・17」になだれ込み、男闘呼組の意気がったロックキッズ感をアピールする流れ。今思えば、Overtureの典型だなって思います。

ちなみに作曲は、Mark Davisこと御大・馬飼野康二先生。幅が広い!

"5th" Overture/「I SCREAM」(Kis-My-Ft2)

I SCREAM(2CD+2DVD)(完全生産限定 4cups盤)

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Overtureと言えばキスマイ。オリジナルアルバムすべてに、番号付きでOvertureが収録されてます。どのOvertureも雰囲気があって好きですが、アルバム「I SCREAM」のOvertureは、直後の「YES! I SCREAM」も含め、それまでのオープニングとガラッと雰囲気が変わり、ぱぁっと明るくウキウキするようなサウンドが展開されています。5枚目にしてキスマイの何かが変わったような、そんなことを感じさせてくれるOvertureです。作曲は、ジャニーズではおなじみのアレンジャーCHOKKAKUさん。いい仕事してます。

ちなみにキスマイのOvertureでは、"1st" Overture/「Kis-My-1st」も好きです。シンセのうねり具合とか、サイレンっぽいノイジーなサウンドとか、キスマイっぽいなぁって思います。このOvertureから「Girl is mine」「SHE! HER! HER!」の流れ、大好きです。

Welcome to Sexy Zone/「Welcome to Sexy Zone」(Sexy Zone)

ホーンセクションとウッドベースが、緊張感と高揚感を煽るスリリングなOvertureです。「Sexy Second」のOvertureでもブラスサウンドが使われていますが、「Welcome to Sexy Zone」のアレンジは、グッと大人っぽさを感じさせます。このアルバムで5人に復帰して、成長して帰ってきたSexy Zoneを強く意識したという点でも、印象的なOvertureでした。Overtureと対照的なデジタルディストーションの「24-7」も、Overtureの後だと、一層インパクトを持って聞こえます。

「Sexy Second」「Sexy Power 3」も含め、これまでのSexy ZoneのOvertureはすべて、生田真心(いくたましん)さんが手がけています。

Introduction 〜STORM〜/「ARASHI No.1〜嵐は嵐を呼ぶ〜」(嵐)

ARASHI NO.1-嵐は嵐を呼ぶ-

ARASHI NO.1-嵐は嵐を呼ぶ-

ここで嵐のデビューアルバムのOvertureを。ヤンチャ&オシャレ路線と言いましょうか?今の嵐を思い浮かべて聞くと、結構違和感があります。デビューした頃は、こういう感じで売ろうとしてたのかな?そう考えると、「嵐」って本来荒々しい名前も何となく合点が行く気がします。このあと「A・RA・SHI」が流れてきて、どことなくとホッとする僕。そう考えると「A・RA・SHI」はずいぶん愛された曲になったんですね。グループに歴史あり、そんなことを感じるOvertureです。

ところで、嵐ってOvertureのイメージあまりないです。特に最近は、あまりOvertureを使ってないです。グループごとにこの使う/使わないの傾向はあって、嵐やKAT-TUNは、Overtureを使わずに、1曲目に歌入りの曲を持ってきて、アルバムの雰囲気を作っています。いろいろ違うものですね。

Invitation/「DEAR.」(Hey! Say! JUMP)

DEAR.(初回限定盤1)(DVD付)

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実はこの「Overture音楽祭」を書きたいと思ったきっかけは、「DEAR.」のOvertureでした。オルゴール、少女の声、「Alice in Wonderland」を思わせるおとぎの国の世界観、あーなんかJUMPっぽいわー、山田くんとか絶対好きなやつだわー、ってつい思っちゃいます。Overtureから曲間0秒で「Masquerade」に行く流れ、最高ですね。Overtureの曲の長さ(57秒)も、僕的には完璧です。

JUMPのOvertureは「smart」以降収録されてて、洋画のオープニングっぽい重厚なものが続いてました。「DEAR.」のOvertureは、重厚さの中に、楽しさとか、かわいさとか、おしゃれな雰囲気とか、いろいろな要素が散りばめられています。その混ざり具合もまた、JUMPらしいなって僕は思います。

High Spirits/「関ジャニ∞の元気が出るCD!!」(関ジャニ∞)

関ジャニ∞の元気が出るCD!!

関ジャニ∞の元気が出るCD!!

これまで紹介したOvertureとは、かなり毛色が違います。メンバーのバンド演奏によるOvertureです。バンド主体の関ジャニ∞については、好みが分かれるように思います。しかし、バンド主体のアルバムをこれでもかと主張するこのOvertureには、関ジャニ∞らしい自由さや楽しさが感じられて、僕は好きです。何より、本人たちの演奏で感じるバンドらしいタイム感は、7人で作ってる一体感と、彼らの音楽に対する意欲を感じます。

僕は一応ベーシストなのですが、丸山くんのプレジションベースで奏でる極太アナログスラップは大好物です。

Overture/「Yesterday&Today」(TOKIO)

YESTERDAY&TODAY

YESTERDAY&TODAY

バンドつながりで、TOKIOのOvertureを紹介。このアルバム「何度も夢の中でくり返すラブ・ソング」ってシングル曲が収録されています。忌野清志郎の作詞作曲で、サイケデリックサウンドの頃のビートルズっぽい曲なのですが、このOvertureはどことなく展開がビートルズの「A Day in the Life」の「それ」っぽいやつに仕上がっています。

このアルバムはユニバーサルレコード移籍前、ソニーレコードでの最後のアルバムです(ちなみに今のレーベルはJ Storm)。この頃のTOKIOはいろいろ模索してたのかなぁ、と振り返ってつい思ってしまうOvertureです。

Theme of "QUARTETTO"/「QUARTETTO」(NEWS)

QUARTETTO【初回盤】(DVD付)

QUARTETTO【初回盤】(DVD付)

Overtureと言えばこれは外せないでしょう。タイトル曲「QUARTETTO」をはじめ、NEWSの声の魅力が溢れに溢れた名盤「QUARTETTO」のOverture。4人の声のコラージュで1つの曲を作る、というだけに留まらず、1つのOvertureでNEWSの魅力とアルバムのテーマの両方を表現した、という点で本当に優秀な作品です。

映像版の「Theme of "QUARTETTO"」が、CDとは違う曲で、ダンスもまた超絶かっこいい。ライブでは、オープニングではなく中盤で効果的に使われた点も、印象的でした。

compass/「NEWS」(NEWS)

「NEWS」(通常盤)

「NEWS」(通常盤)

すみません、もう1つ、もう1つだけNEWSを。結局どのOvertureが一番好きなんですか?と聞かれたら、これなんです。作りで言えば「Theme of "QUARTETTO"」の方が圧倒的に手が込んでます。「compass」は本人の声もありません。でもやっぱり、このOvertureのセリフ、
 「KK SK TM YT. We are back. We are NEWS.」
これ聴くたびに、(案外大袈裟でなく)毎回毎回鼻の奥がつーんとします。帰ってきた4人、その決意を表したOvertureの言葉、それが彼らの行く先を示した「compass」です。この曲なら、ジャニヲタ早泣き選手権マスターズ(40代以上)男子の部で優勝できると自負しています。

ちなみにこの泣ける言葉をつけたのはRyohei Yamamotoさん、アルバム「QUARTETTO」では、あの「NEWSKOOL」を作詞作曲しています。ああ、マジ天才。

いかがでしたでしょうか「Overture音楽祭」。Overtureは普段、つい聞き逃してしまうことも多いかもしれません。しかしOvertureを深く知ることで、彼らが表現しようとしている世界がより明確に見えてくるのではないか、私はそう思います。もちろん、Overtureは単なる序曲にしかすぎません。しかしOvertureには、主題につながる何かしらの意味があり、意図があり、背景があるのです。それを汲み取った上で彼らの歌を聴くと、我々の理解もまた一層深まるかもしれません。普段Overtureをスキップしてしまう方も、Overture好きだよという方も、この機会に改めてOvertureを聴いてみてはいかがでしょうか。それではみなさんまた逢う日まで、ごきげんよう、さようなら!
(音楽祭ということで、エンディングは「残り1分で締めて」と言われた櫻井翔風にまとめてみました。)