君が好きだから僕は書く

恒松エントのブログとエッセイ

無門と大野智、リンクする2人/映画「忍びの国」鑑賞記

※この記事は、映画「忍びの国」の内容に、一部ですが触れています。あまり事細かく内容について触れるつもりはありませんが、これから映画をご覧になる上で不都合が生じる方は、ぜひ映画をご覧になってからお越しくださいませ。

今日は映画「忍びの国」初日、というわけで、妻と二人、舞台挨拶中継付きのチケット*1を握りしめて、観に行ってきましたよ。

今日は朝から、「王様のブランチ」出て、その後舞台挨拶に臨んで、夜は毎年恒例の「THE MUSIC DAY」ということで、ちょっと想像するだけでも恐ろしくハードな1日だったでしょうね。大野くん、1日おつかれさまでした。

で、観た後の感想をツイートしようかと思ったのですが、どうにも140文字の中に収めきれる気がしなかったので、夜な夜なこうして、勢いに任せてブログを書いている次第です。乱筆乱文、お許しください。

いや、っつかね、想像以上に面白かったのですよ、この作品。あの「ゴールデンスランバー」の中村義洋監督だし、絶対に大野くんハマリ役だし、ほかにも間違いない役者が揃ってる*2し、そりゃ絶対面白いでしょ、と思ってたけど、その想像の範疇を超えて面白かったですね。内容的にはシナリオもさることながら、戦闘の描写がリアルなこともあって、結構ハードボイルドな作品でした。ただ、こういうのは映画だから許されると思うので敢えて表現すると、人と人が命を削り合うシーンを観ていて、恐ろしさを感じつつも、妙にワクワクしてる自分がいました。

…わかる人にしかわからないかもしれないですが、ちょうど「HUNTER×HUNTER」の「クロロVSヒソカ」*3を読んだばっかりだったということもあったので、この戦いに通じるものを感じていました。殺伐とした世界の中で、独特の能力と感性を持つ者が繰り広げる、常軌を逸脱した戦いが、おそろしく魅力的に見える、織田軍と伊賀、アンチヒーロー同士の戦いを見ながらそんなことを考えていました。

映画公開前に、映画についてのインタビューなどもいくつか観たのですが、その中の印象的な内容の一つに「監督から『大野くんはそのままでいい』と言われた」というエピソードがありました。これ、映画のCMが公開前にテレビで流れてる時点で、多くの人が実際に感じたはずです。僕もその一人です。もちろん、すべてが同じであるわけではなく、例えば戦国の世では軽んじられたであろう人の命に対する考え方を、今の大野くんが持っているわけでは到底ありません。無門が役である以上、無門は無門、大野智は大野智であることは間違いありません。それでも、大野智が無門であり、無門が大野智である、2人がそう重なって見えた瞬間が、演出上の見せ方も含め、随所にありました。

僕の中で、その重なり方が印象的だな、と思ったことが2つあります。1つは、無門のある戦闘シーン。詳細は映画を観ていただくとして、文字通り、踊るように戦う無門の姿。そしてもう1つは、実は舞台挨拶。敵役である鈴木亮平さんが語った、大野くんは殺陣のシーンをしていてもどんどん先に進んじゃう、という裏話。感性をアンテナにして、頭の中で形作って、その高い身体能力で表現する様が、まさに無門であり大野くんでした。

ところであの映画「忍びの国」に登場する伊賀国は、まさに修羅の世界でした。そして常人を凌駕する能力を持つ者たちの中でも、さらに圧倒的な能力と徹底したポリシーを持つ無門は、修羅場の中における絶対的な正義を体現する存在でした。私たちの思う正義という意味では、無門と相対する下山平兵衛の方が間違いなく近いはずです。それでも物語の主人公が、我々に近い正義を有する下山平兵衛ではなく、一見すると悪にすら見える無門であるのは、あの修羅の世界における殺伐が、僕たちの生きる現代世界の中に確実に存在するからだと思うのです。

伊賀国と僕たちの生きる現代社会がリンクするように、伊賀国の中で高い能力と独特のポリシーを持つ無門と、今の僕たちの世界で「嵐」という存在で広く知れ渡り、その中で確固たる感性を発揮している大野智がリンクする、そんな共通性がこの映画には仕組まれていて、それを軸としてストーリーが描かれていたように感じました。おそらく他の役も、どこか僕たちの生活においての何らかのポジションに置き換えられる存在であり、それが台本として組み込まれているような気がしました。

そして何物にも流されないであろうはずだった無門が、知ってしまったが故に価値観を揺るがされてしまったもの、それがこの映画の主題であると僕は思うのです。では、無門と大野智という2つの存在がどこまでリンクしているかはともかく、無門にとって決定的な価値観となったものは、大野智にとっては何だったのでしょう。あくまで想像の話でしかありませんが、もしかしたらそれが「嵐」という存在だったらいいな、そんなことを思いました。簡単には揺るがない人間だからこそ、数少ない決定的な価値観が、その者の絶対的な存在になる。そのあたりももしかしたら、乱世の世を生きる無門と、現代を生きる大野くんが重なって見えた理由かもしれませんね。

ああ、哀しい話ではあるのかもしれないけど、やっぱり面白い映画だったなぁ。もう一度観たいなぁ。確かに刺激の強い描写は多いので、純粋に万人に、とはいかないでしょうが、キャストやスタッフの方が語っていたように、いろいろな要素が詰め込まれた上で、最終的に上質なエンターテイメント作品として多くの人が楽しめる形に仕上がっているのは、間違いないと僕は思いました。これからご覧になるみなさん、ぜひ楽しみにしてくださいね。

*1:ちなみに僕たちが観たのは、2回目の上映でした。もちろん大野くんや他のキャスト・中村義洋監督の話も興味深かったですが、そんな中、その映画の舞台挨拶で「大野くんとの思い出ムービー」と笑顔で言い切れる強火大野担・知念くんと、三本締めで思いがけず大野くんの「お手を拝借!」が聞けたのが、ジャニヲタ的にはテンション上がりましたね。

*2:僕、マキタスポーツさんが好きなんです。芸人としても、俳優としても。立川談春さんもそうかもしれませんが、もちろん俳優としても成立しているのですが、演技の切り口がというか、言葉の発し方がやっぱりいわゆる俳優さんと違う気がするんですよね。あと、知念侑李くん演じる織田信雄の、あの青くて甘っちょろい感じ、すごく良かったですね。

*3:HUNTER×HUNTER モノクロ版 34 (ジャンプコミックスDIGITAL)