この文章には、特にゴールはありません。2023年9月7日、ジャニーズ事務所は、創業者である故・ジャニー喜多川さんの性加害問題を受けて、記者会見を行いました。その中で、藤島ジュリー景子前社長による性加害の認定と、東山紀之新社長への交代が発表されました。この文章は、ジャニーズを愛するファンの一人である僕が、この記者会見を見て感じた今の気持ちを、自分なりに整理したものです。
この件については、安易に意見を述べるべきではない、というのが僕の基本姿勢です。しかし、「ジャニヲタおじさん」という名前で執筆等の活動をしている者として、この件に全く触れないことも、責任を放棄しているように感じました。そのため、この件に関して僕が感じていること、考えていることを、できるだけ慎重に文章にまとめようとしています。少なくとも、誰かを責めたり、何かを否定することを目的としておりません。また逆に、誰かを扇動したり、何かを提言することも目的としておりません。その点だけ、あらかじめご了承ください。
まずこの問題は、内容自体が非常にデリケートです。そして、少なくともただのファンである僕たちが、自分たちの力で真実を知ることは、ほぼ不可能です。当事者でもない者が、知見も専門性も持たず、安易な憶測や正しくない事実に基づいた発言をすることは、ジャニーズのアイドルや、彼らのファンを、不要に傷つける恐れがあり危険です。ましてやジャニーズ事務所は、未成年者のアイドルやファンを多く抱えています。彼らに安易な情報を伝えることは、彼らの精神や価値観に深く影響する可能性があります。したがって、この性加害問題に触れる上では、配慮と責任を持って慎重に発言する必要がある、と考えています。
実はこの性加害問題に関連して、ここ数ヶ月で複数の取材依頼が僕に対してありました。この件に限らず、仕事や取材等の依頼に関しては、基本的に内容をお伺いしてから判断するのが僕のポリシーです。しかしこの件に対しては、僕が第三者のメディアを通して配慮と責任のある発言をすることが難しいという理由で、そのすべてをお断りしているのが実情です。
先日の記者会見は、事前にある程度の覚悟はしていたものの、僕にとって想像以上に、ショックで悲しいものでした。
僕が悲しいと感じた理由は、大きく3つありました。1つは、僕たちが応援するジャニーズのアイドルが、強い誇りや愛着を持っていたであろう「ジャニーさん」という存在を、彼ら自身の手で否定しなければならなかったということです。被害に遭われた方にとっては、当然憎悪すべき存在であることは理解しています。しかし、自分の愛する人が憎悪の対象になる、という事実は、僕自身の愛する人に置き換えて考えてみても、その苦しさは容易に想像できます。その上で、彼らが長年愛してきた人を大衆の前で自ら否定する姿は、まるで彼らのアイデンティティーを自らの手で抹殺しているように、僕には見えました。それが何よりも、悲しく、苦しかったです。
もう1つは、アイドル自身に直接的な責任がない事柄で、彼らが情熱を注いできたエンターテイメントにおける活動が大きな制限を受けることでした。ステージに立つ彼らが、自らの理想とするエンターテイメントに、文字通り、全身全霊を持って臨んできた姿を見てきただけに、それが突然、自分の力ではなす術もなく、機会を奪われていく様は、心が痛いです。
「ジャニーズ」という名前を掲げて活動をすることに、決して少なくない人たちが嫌悪感を示すこと自体は、現状では仕方のないことだと理解しています。しかし、この件で活動の自粛を求めることは、少し筋が違うようにも感じています。ジャニーズ事務所の経営に対する厳しい意見は仕方ないにせよ、それがアイドルである彼らに向けられることは、問題の根幹とかけ離れているように思います。この問題に対する批判が、ジャニーズのアイドル自身と、エンターテイメントそのものに向けられることは、ファンの立場としてではあるものの、それは違うという思いを抱いています。
一方で、ジャニーズ事務所に所属するタレントを起用しない動きが相次いでいる点は、僕個人としては、一定の理解をしています。利益を目的として考えたときに、損害を招きかねない状況で彼らと契約することはできない、という判断には合理性があるからです。社会的道義の観点でも、彼らを起用するより、彼らを起用しない方が、一般的には道理が通ることも理解できます。その意味でジャニーズ事務所は、社会的責任を果たさない限り、大きく売上を減らし続け、いずれはジャニーズ事務所を維持することができなくなるリスクがあります。ジャニーズ事務所は全社を挙げて、企業としての責任の表明と、その遂行に努める必要があります。ジャニーズのエンターテイメントを守るためにも、経営が責任を果たしてくれることを、切に願っています。
3つめは、この件を収束させるために、1人のタレント生命を終わらせることになってしまった点です。東山紀之社長…ヒガシには、社長に就てほしくなかった、というのが偽らざる本音です。とはいえ…これはただの推測ですが、ジャニーズという存在自体が否定される中、創業者家系であるジュリーさんが社長として存在することが不利益につながる、という判断は同意できます。また、外部からの人材を登用することでジャニーズの文化が大きなダメージを受け、ジャニーズがジャニーズでなくなるリスクも、考慮としてはあり得ます。その結果、ジャニーズのタレントが社長につかざるを得ない、という状況は僕なりに想像しました。井ノ原くんがジャニーズアイランドの社長を行っている以上、他に社長となりうる人材がいなかった、ということもあるかもしれません。東山紀之社長には多くの裏方の支えが必要になるだろうと想像しますが、経営人事についてはあまり選択肢がなかったのかな、というのが個人的な感想です。
今年のTBS音楽の日、ケンティーとのディズニーコラボで見せたヒガシの凛々しい姿を思うと、この問題のために東山紀之というエンターテイナーを引退させることは、あまりにも大きな代償だったように思います。ジャニーズのレジェンドとして、死ぬその瞬間まで、ヒガシにはステージに立っていて欲しかったです。ジャニーズ事務所が本当に企業として変わらないといけない今、東山紀之という圧倒的なレジェンドを引退させて経営に臨む、という代償が正しかったことを、経営陣はいつか証明してほしい、今はそう思います。
今後については、正直何もわかりません。今も、そしておそらく将来も、真実が完全に究明されることはないでしょう。しかし、将来的に警察や司法の判断を仰ぐことはあるにせよ、それを待たずに事務所が性加害を認めたということは、真実の全てではないにせよ、事務所が認定せざるを得ない何かしらの事情なり物証なりがあったんだろうと思います。とはいえ、それもまた憶測です。ジャニーズ事務所は、ファンにも顧客にも社会にも永遠に明かされない真実で失った信頼を取り戻すという、かつてない難題に取り組むことになるでしょう。そこにはやはり、不安しかありません。ファンとしては、心苦しいですが、僕ができることは、僕が愛するジャニーズのアイドルとエンターテイメントをこれまでどおり、応援することだけ、そう思っています。ファンは応援すること以外でアイドルを支えることはできない、僕がずっと思ってきたことを、これからも続けるだけです。
あとひとつ、触れておかなければいけないことがあります。「ジャニーズ」という名前は、今ではないにせよ、いずれは変えざるを得ないだろう、と個人的には思っています。もちろん、ジャニーズという名前を残すという選択も、あり得るでしょう。しかし、タレントを守る、しかも極力影響を長引かせず、彼らのエンターテイメントを1日でも早く取り戻すことを考えると、「ジャニーズ」という名前を残すことによる不利益の方が大きいように感じました。このタイミングで、十分に検討されないまま、アイデンティティーの感じられない名前に変更することは、むしろ誠意のない行為のように思います。しかし、彼らが自らのアイデンティティーと言える「ジャニーズ」という冠を外す決断をしたときは、彼らは未来に向かって、エンターテイメントを残していく決意をしたのだと、僕はファンとして後押ししたいです。そのときには、僕の「ジャニヲタおじさん」という名前も、変えざるを得ないだろうな、と思っています。
今、この状況が辛く、苦しいファンの方もきっと多くいるのだと思います。辛いことに対して、自分が潰れるくらいなら、今いるこの場から距離を置くこともひとつの選択なのだと思います。アイドルにせよ、ファンにせよ、自分を守るための判断を、僕は尊重したいです。もし、今苦しい思いをしている方がいれば、思いつめず、時には目を逸らして、どうか心穏やかに、過ごしてほしいです。今傷ついている方が、また笑ってエンターテイメントを楽しめることを、僕は切に願っています。
僕自身もいまだに、混乱の中にいる、というのが事実です。それでも、僕の愛するアイドルと、彼らが最高だと信じるエンターテイメントを、これからも応援していきたいと思います。そのために払われる努力を、僕は見守りたいです。